FEATURE — 01 of 12  ·  BEGINNER

暗号資産、最初の一歩。
— from registration to first purchase, in seven steps.

口座を開き、本人確認を済ませ、日本円を入金し、最初の購入をする。たった 7 工程の作業ですが、はじめての方にとっては、それぞれの工程に小さな迷いが挟まります。本稿では、判断ではなく 操作 に集中して、最短で迷わないための手順を記述します。

暗号資産を「買う」という行為そのものは、技術的にはオンラインバンキングよりやや複雑な程度の作業です。難しさは操作にあるのではなく、どの工程で何を判断すべきか の見通しが立たないことにあります。本稿は、判断を一旦すべて棚上げして、操作だけを並べてみる試みです。

必要なものは、運転免許証またはマイナンバーカードのいずれか、銀行口座、スマートフォン、そして約 30 分の時間。それだけです。

7工程
FROM REGISTRATION TO FIRST PURCHASE
~ 30
ESTIMATED TIME — 所要時間の目安

工程 01. 取引所を選ぶ。

はじめに、どの取引所を使うかを決めます。本誌の 取引所比較 ページに、国内 5 社の項目別の比較表があります。最初の 1 社を選ぶ基準は次の 3 点で十分です。(1) 金融庁の登録があること、(2) 板取引に対応していること、(3) 買いたい銘柄を扱っていること。

工程 02. アカウントを作成し、本人確認を完了する。

メールアドレスとパスワードでアカウントを作ったら、続けて eKYC(オンライン本人確認)に進みます。多くの取引所では、身分証の撮影と顔写真の撮影をスマートフォン上で完結でき、最短で当日中に審査が通ります。土日を挟むと遅れる場合があります。

工程 03. 二段階認証(2FA)を有効化する。

本人確認の完了後、ログインしたら最初にやるべきことは、二段階認証の有効化です。Google Authenticator か Authy のような認証アプリを使い、SMS 認証は補助として残します。これを後回しにしてはいけません。

口座開設の直後は、まだ資金が入っていない状態だからこそ、セキュリティの設定に手をつける最も適した時間帯です。

工程 04. 日本円を入金する。

銀行振込、コンビニ入金、即時入金など、選択肢は取引所により異なります。手数料がかかる方法・かからない方法を比較してから振込んでください。多くの取引所は銀行振込が無料です(送金側の振込手数料は別途)。

金額の目安について

最初に入金する金額は、「最悪、全額失っても生活が変わらない額」 を基準にすることを本誌は推奨しています。5,000 円や 10,000 円から始めることに、何の不都合もありません。

工程 05. 「板」と「販売所」の違いを、知っておく。

同じ取引所内に、ふたつの売買方式が存在します。板取引 は注文板に指値・成行を出して、利用者同士で売買が成立する形式。販売所 は取引所が固定価格で売買する形式です。用語集 に詳細があります。

結論だけ書きます。多くの場合、板取引の方が実効コストが低いです。 同じ価格で板に成行を出しても、販売所では数 % のスプレッドが乗ることが珍しくありません。

工程 06. 最初の購入をする。

板取引で、ビットコインを 1,000 円分だけ買ってみる、というのが本誌の推奨する最初の購入です。0.0001 BTC 以下から購入できる取引所もあります。買ったあと、画面の数字が秒単位で動くことに、まず慣れてください。

工程 07. 価格を見ない時間を、意識的に作る。

これは技術的工程ではなく、規律の工程です。最初の購入から最初の 1 週間、価格を 1 日 1 回以上見ないことを推奨します。価格を見る頻度と、判断の質は反比例することが多い、というのが本誌の経験的な観察です。

ここまでで、口座を持ち、本人確認を済ませ、二段階認証を有効化し、入金を済ませ、板で最初の購入をし、価格を見ない時間を作る、という 7 工程が完了しました。あなたはもう、暗号資産を持っている人です。

工程 08. 「税」を、はじめから意識する。

日本の現行制度では、暗号資産の利益は原則として 雑所得・総合課税 です(2026 年 5 月時点)。給与所得などと合算され、最大税率は所得税 45% +住民税 10% = 55%。さらに見落とされがちな点が 3 つあります。

  1. 日本円に戻していなくても、課税対象になる。 たとえばビットコインからイーサリアムへ交換した時点で、その時の時価で含み益が確定したものとみなされ、課税対象になります。
  2. 暗号資産での決済も課税対象。 取得時より値上がりした暗号資産で買い物をした瞬間、差額が雑所得として計上されます。
  3. 取引所の年間取引報告書は、自動で税務署には届かない。 確定申告は読者自身で行う必要があります。各取引所が用意する「年間取引報告書」のダウンロード機能を、12 月末までに必ず確認しておくこと。

本誌の 税制整理記事 に、計算の最小限を別途まとめています。投資判断と税務判断は別の工程として、最初から並行で扱うことを編集部は推奨します。

最初の 30 日で、起こりがちな 5 つの落とし穴。

編集部が読者の質問・SNS の観察・編集部自身の経験から整理した、最初の 1 ヶ月でよくある失敗です。事前に知っているだけで、半分は避けられます。

  1. P.01
    販売所で買って、実効コストの高さに後から気付く。 「ワンタップで買える」便利さの裏には、数 % のスプレッドが乗っていることがあります。最初の 1 回は販売所、2 回目からは板取引へ、と意識的に切り替えること。
  2. P.02
    2 段階認証を後回しにして、その間に資金を入れる。 「いったん入金して、後でセキュリティ設定する」が一番危険です。資金を入れる前に必ず認証アプリを設定してから入金する。順序が逆になると、フィッシング被害の入り口になります。
  3. P.03
    SNS の「次に来る銘柄」を、確認なしで買う。 SNS の発信者は、自分のポジションを売るために発信していることがあります。少なくとも、その銘柄の「設計(コンセンサス・発行上限・運営体)」を 5 分でも調べてから判断する習慣を。
  4. P.04
    価格が下がっただけで「失敗」と思い込む。 暗号資産は 50% 以上の下落も歴史的に何度もありました。長期保有を前提にするなら、最初の数ヶ月の上下は誤差です。価格を見る頻度を意識的に減らしてください。
  5. P.05
    税のことを「来年考える」と先送りにする。 取引を始めた瞬間から、年内の利益確定は積み上がっていきます。年明けに慌てるより、12 月末に年間取引報告書をダウンロードして、確定申告の必要有無を判断するクセを。

最初の 30 日のチェックリスト。

この記事の内容を 1 枚で確認できるチェックリストです。スクリーンショットを撮って手元に置いてください。

  • ☐ 金融庁登録の取引所を 1 社、選んで口座開設した
  • ☐ 本人確認(eKYC)を完了した
  • ☐ 認証アプリ(Google Authenticator / Authy)で 2 段階認証を有効化した
  • ☐ ログイン用パスワードと認証アプリのバックアップコードを安全な場所に保管した
  • ☐ 最初の入金額は「最悪、全額失っても生活が変わらない額」に設定した
  • ☐ 最初の購入は「板取引」で行った(販売所と区別できた)
  • ☐ 価格を見る時間を 1 日 1 回以内に決めた
  • ☐ 取引所の「年間取引報告書」がどこにあるか確認した
  • ☐ 本誌の 銘柄解説用語集 をブックマークした

FAQ — 編集部に寄せられた最初の質問。

Q. いくらから始めればいいですか?

A. 金額に「正解」はありません。本誌は「最悪、全額失っても生活が変わらない額」を推奨しています。具体的には、月収の 1% 以下、もしくは趣味の予算と同程度から始める方が多いです。5,000 円〜 10,000 円で十分です。

Q. 最初に買うべき銘柄は?

A. 本誌は特定銘柄の購入を推奨しません。ただし、編集部が「最初に学ぶ対象として最も適切」と考えるのは、流動性・歴史・規制対応がもっとも整っている ビットコイン です。学習対象として優れているという観点であり、投資先としての推奨ではありません。

Q. 複数の取引所を使い分ける必要はある?

A. 最初の 6 ヶ月は 1 社で十分です。慣れてきて、「この銘柄はあの取引所の方が手数料が安い」「ステーキングを使いたい」など、具体的な必要が出てきてから 2 社目を検討してください。最初から複数社に分散すると、セキュリティ管理が複雑化します。

Q. ハードウェアウォレットは必要?

A. 保有金額が 50 万円を超えてきたら、検討対象に入ります。ただし、自己保管は「秘密鍵を永久に自分で管理する責任」が伴うため、誰にでも勧めるものではありません。初心者の最初の 6 ヶ月は、取引所のセキュリティ設定を完璧にすることに集中してください。

Q. 取引所が倒産したら?

A. 国内の金融庁登録の暗号資産交換業者は、顧客の日本円を信託保全し、顧客の暗号資産の 95% 以上をコールド管理する義務があります。万一の倒産時にも、これらは原則として保全対象です。ただし、海外の取引所(特に未登録のもの)は、この保全がない場合があるため、本誌は国内登録業者のみを比較対象としています。

最後に、次に読むべき記事。

操作の章は以上です。次は ビットコインの設計 を読み、税制の整理 を読み、そして用語に慣れたら 他の記事 をひとつずつ。焦らず、鵜呑みにせず、自分の頭で。それが、本誌が読者と共有したい唯一の規律です。

Sources: 金融庁「暗号資産関連 Q&A」(2026.04 更新版) / 国税庁「タックスアンサー No.1524 暗号資産取引の所得計算」 / 各社公式 FAQ (2026.05 取得)。本記事は情報提供を目的としており、特定の暗号資産・取引所の購入を推奨するものではありません。